すうぷ屋 Hygge
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何かが足りない

それでぼくは楽しくない

足りないかけらを
探しに行く

ころがりながら
ぼくは歌う

「ぼくはかけらを探してる
足りないかけらを探してる ラッタッタ さあ行くぞ
足りないかけらを探しにね」

かんかん照りあれば
涼しい雨も降る
雪でこごえたかと思えば
またぽかぽかのお日和

なにしろぼくの体はかけていて
あんまり速くはころがれない
それで立ち止っては
みみずとお話する

この花はいい香り

かぶとむしを追いこしたり

かぶとむしに
追いこされたり
愉快なことはない
どんどん進む
海を渡り

「ぼくはかけらを探してる
野越え海越え ランランラン ロンロンロン
ぼくのかけらを探してる」

沼もやぶもものともせず

山に登って

またくだり

とうとうある日のこと

「 ぼくのかけらを見つけたぞ
ぼくのかけらを見つけだぞ
ランランラン ロンロンロン
ぼくのかけらを……」

「おい待てよ」
とかけらがいった

「調子よく歌うのもいいけれど……
ぼくはきみのかけらじゃないからね
誰のかけらでもないからね
ぼくはぼく
もしぼくが
誰かのかけらだったとしても
きみのだなんて思えない」

ぼくはがっかりしていった

「そう じゃましてごめん」
それでまたころがっていく

またかけらが見つかった

でも今度のは小さすぎ

こいつは大きすぎ

これは尖りすぎ

これは角ばりすぎ

ぴったりの
かけらを見つけたと
思ったのもつかのまで

しっかりはめておかなかったので
落してしまった

きつく
くわえすぎたら こわれてしまった

とにかくどんどんころがっていく

むちゃをしたり

穴に落ちたり

石の壁にぶつかったり

そしてある日のこと
ぼくにぴったり合いそうな
かけらに出会った

「やあ」とぼく
「あら」とかけら
「きみは誰かのかけらかな?」
「さあどうかしら」
「でもきみは きみのままいたいのかもしれないね」
「誰かのものになったって あたしはあたしよ」
「でもぼくのものにはなりたくないかもしれないしね」
「さあどうかしら」
「でもぼくにはうまくはまらないかも……」
「やってみたら」

「どれ」
「ほら!」

はまったぞ
ぴったりだ
やった! ばんざい!

ぼくはころがる
もう
すっかりまるくなったから
前よりも
ずっと速くころがる
こんなことは
はじめてだ

あんまり調子よくころがるので
みみずとお話することも

花の香りをかぐことも

ちょうに止まってもらうこともできない

でも楽しい歌なら歌えそう
今なら歌える
「ぼくのかけらを見つけたぞ」

ぼくは歌いだす

「ぼぐのがげらをみづげだぞ
ぼぐのがげらをみづげだぞ
ラムラムラム
ロムロムロム
みづげだぞ」

あれ?
まるくなったと思ったら
今度はちっとも歌えない

「なるほど
つまりそういうわけだったのか」

それでぼくはころがるのをやめて

かけらをそっとおろし

一人ゆっくりころがっていく

ころがりながらそっと歌う

「ぼくはかけらを探してる
足りないかけらを探してる
ラッタッタ さあ行くぞ
足りないかけらを探しにね」